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節分の炒り豆

2009.02.03(19:54) 298

節分の炒り豆というお話が、地域に伝わっています。
節分なので、子供たちに語り聞かせてあげました。
あきあかねは、炒り豆をボリボリ食べながら聞いています。



むかしむかし、ある村の山奥に、天狗巌と呼ばれる大きな岩がありました。岩の上には大きな木が生えて、枝がくもの手足のように広がり、千尺もあるがけの下まで垂れ下がっていました。この岩の上が、天狗の舞台と呼ばれ、その辺りにはたくさんの天狗が住んでいました。
 この天狗たちが、たいそう悪さをする天狗たちでした。相撲をとったり、けんかをしたり、ふざけあったり。そうかと思えば、空を飛び回ってうちわで風を起こす競争をしたり、中には面白半分に、大きな石をあっちの畑へドスン、こっちの田んぼへドスンと投げ落としたりするのもいました。
 天狗たちは、面白がってやっていましたが、村の人たちはたまりません。天狗が風を起こすたびに、木が倒れたり、家の屋根が飛んだりします。岩や石が落ちるたびに、辺りは地震のようにゆれます。村の人は、いつ大風に吹き飛ばされたり、岩が落ちてきて下敷きになったりするか分からないので、おちおち仕事もできません。天狗が悪さをしたあとを見ては、ため息をつくばかりでした。
「これでは外へ出て働くこともできん。」
「いったい、どうしたらいいんだろう。」
 村の人たちは、相談をして、天狗たちにお願いに行くことにしました。
 はじめの男が、田畑で取れたものやお酒などをいっぱい持って、天狗巌までおそるおそる登っていきました。けれど、集まった天狗たちを見たとたん、おそろしくなって帰ってきました。
 次に、二人目の男が、田畑で取れたものやお酒などをいっぱい持って、天狗巌までおそるおそる登っていきました。そして、集まった天狗たちにおみやげをわたしてから、
「天狗さん、天狗さんは面白くてやっているのかもしれませんが、私たちはこわくてたまりません。どうか暴れるのをやめてください。」
とたのみました。すると天狗が、
「何を言うか。ここはもともとわしらが住んでおったところじゃ。そこへお前らが勝手に住みついているだけではないか。お前らのせいでわしらは思い切り遊ぶことができん。」
と言いました。そう言われて、二人目の男はすごすごと帰ってきました。
 そこで、三人目の男が、田畑で取れたものやお酒などをいっぱい持って、天狗巌までおそるおそる登っていきました。そして、集まった天狗たちにおみやげをわたしてから、
「天狗さん、天狗さんは面白くてやっているのかもしれませんが、私たちはこわくてたまりません。どうか暴れるのをやめてください。」
とたのみました。すると天狗が、
「何を言うか。ここはもともとわしらが住んでおったところじゃ。そこへお前らが勝手に住みついているだけではないか。お前らのせいでわしらは思い切り遊ぶことができん。」
と言いました。そう言われても、すごすごと帰るわけには行きません。
「そのとおりです、天狗さん。ではこうしてはどうでしょうか。畑で、炒り豆の花が咲くまでは、この村を私たちに貸してください。そのあいだだけは、どうか暴れるのはやめてくれませんか。」
と言って、おみやげの中の炒り豆を取り出してたのみました。炒り豆を受け取った天狗たちも、それくらいならたいしたことはないだろうということで快く引き受けてくれました。
 天狗たちは、畑に炒り豆をまいて芽が出るのを待ちましたが、十日たっても二十日たっても芽が出ません。それもそのはず。いくら待っても炒り豆の芽が出て花が咲くはずがありません。天狗たちは村へ行って炒り豆の花が咲いていないかさがしてみましたが咲いているはずはありません。
 このことがあってから、天狗の悪さはなくなり、大風も岩が落ちてくることもなくなりました。

村の人たちは、節分の豆まきには、真っ黒になるまで炒った豆をまくということです。炒り足りずに、まいた豆が芽を出して花が咲いたら、天狗に村を返さなければならないからです。



「お父さん、これ、この辺りで昔、本当にあったお話し?」
「本当にあったお話しやで」
「ぼくもそう思う」
あめん坊は、信じています。

げんごろう式



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